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2008年01月02日

伝統とその継承

昨年の「シリコンバレー寄席2007秋」 の話になるが、今回新しい試みで、「こどもたちのための落語の集い」 を企画。日本語補習校の先生、父兄、そして師匠のご協力を得て、本番の「圓橘の会」ともども大盛況で終えることができた。お客さんを交えての懇親会を終えて帰宅したのが夜の10時過ぎ、軽い酔いと、心地良い疲労感でソファーに横になっていると、テレビから浮世絵の話が聞こえてきた。
目を閉じて聞いていて、浮世絵の摺り師として、鉄井孝之さんが紹介されたところで飛び起きた。摺り師として50年を越える道を歩んでいる鉄井孝之さんは、スシトミML相模原支部長鉄井さんの実兄で、スシトミに飾られている浮世絵2点は、いずれも鉄井さんの作である。

2007  冬 日本&クリスマス 289.jpg 2007  冬 日本&クリスマス 294.jpg

番組は、昭和期に復刻された広重版画の版木を使い、鉄井さんたちが摺りなおす過程を追跡したものだが、耳目を奪われたのは、この孝之さんの息子さんが父の跡を継ぐべく、父のもとで修行している様だった。師匠である父は、弟子である息子の前でこの復刻版の監修者にダメをだされ、何度もやり直すのである。摺り師を代表する平成の名人にあげられる人が、「くやしいなあ」 と呟きながら、その違いを理解するがゆえに何度も摺り直す。そしてその師匠の背中を見つめ続ける弟子。

落語の修行は、日々師匠のお世話が中心で、噺自体は3度教わって覚えてしまい、あとは自分で練習するという。でもそうはいいながら、毎日師匠の元にいて、その師匠が毎日練習する様を見て、聞いていると、それがまた修行になるんだろう。

鮨屋の修行も親方に教わり、模倣し、同じ寿司をいかに再現できるかがその目標になるので、同じ板場に毎日立ち、仕込みから後始末までをともに繰り返し、少しづつ任される量が増えることで自信も責任感もついてくる。

「何年修行したら寿司を握れますか?」 よく聞かれる質問だが、ただ単に巻き、握るだけならば、器用な者なら半年もすればできるものである。しかしながら隠れた輝きを持つ弟子に対し、技術以外の、教えられるのではなく、感じ取って欲しい理屈ではない先人の知恵や作法・・・つまり言葉では伝えにくいものこそが伝統なのかもしれない

半世紀以上この世界に身を置きながら、200年前の摺りの再現に苦しむ師匠の姿を見ることは、弟子にとってかけがえのない修行になることであろう。

言葉で伝えることは難しい。でも今回の「子供たちのための落語の集い」を通して、アメリカに住む子供たちが落語に触れ、実技を体験したことには意義があったと思う。噺を子供向けにアレンジせず、「時そば」を演じてくれた圓橘師匠には感謝したい。教えることではなく、感じることが大事だからだ。

次回のシリコンバレー寄席は2009春を予定している。この企画は続けていこう。日本では忘れられていた版画の芸術性の高さが海外で評価されたように、落語の楽しさをアメリカで覚えたという子供たちが出てきたら素敵なことだと思うから。  07.10.14圓橘こども集いIMG_0451.JPG 皆ならんでIMG_0467.JPG


投稿者 sushitomi : 2008年01月02日 20:40

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